【保存版】これだけ見れば大丈夫!ZEBまとめ

ZEBとは?

Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼びます。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。

建物の中では人が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできませんが、省エネによって使うエネルギーをへらし、創エネによって使う分のエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができます。

ZEBのメリットってなに?

ZEBには、エネルギー消費量が削減できること以外にも様々なメリットがあります。具体的には、大きく以下の4点がZEBのメリットとして挙げられます。

建物の関係者には、オーナー、働く人、訪れる人など、さまざまな立場の人がいます。その立場によって得られるメリットは異なるものの全ての人々に対してZEBのメリットは存在しています。

そのため、ZEBを実現・普及させるためには、各立場の人々が自らのメリットを理解した上で協力していくことが必要です。

建物で使われている エネルギーってどんなもの?

私たちが仕事や生活をするために、建物では様々なエネルギーが使われています。発電所などから送られてきた電気やガス、熱といったエネルギーを、空調、換気、照明、給湯、エレベーター、OA機器などの形で消費しています。

建物で使うエネルギーをできるだけ減らし、できるだけ自分の建物でエネルギーをつくることで、ZEBに近づけていくことができます。

(※OA機器等のエネルギー消費量はZEBの計算からは除外されます)

ゼロエネルギー化って本当にできるの?

建物のエネルギー消費量をゼロにするには、大幅な省エネルギーと、大量の創エネルギーが必要です。そこで、ゼロエネルギーの達成状況に応じて、4段階のZEBシリーズが定義されています。

・「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ))
省エネ(50%以上)+創エネで100%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物

・Nearly ZEB(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ニアリー ゼブ))
省エネ(50%以上)+創エネで75%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物

・ZEB Ready(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・レディ(ゼブ レディ))
省エネで基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物

・ZEB Oriented(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・オリエンテッド)
延べ面積10000㎡以上で用途ごとに規定した一次エネルギー消費量の削減*を実現し更なる省エネに向けた未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入している建物

※1建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律に基づくエネルギー消費性能基準
※2未評価技術は公益社団法人空気調和・衛生工学会において省エネルギー効果が高いと見込まれ、公表されたものを対象とする。
※事務所等、学校等、工場等:40%、ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等:30%

「3.ZEBのメリットってなに?」で紹介したメリットは、「ZEB」だけではなく、Nearly ZEBやZEB Ready、ZEB Orientedにも該当するものであるため、100%の一次エネルギー消費量の削減が難しい場合でも、ZEBシリーズとして実現を目指していくことが必要です。

どうやったらZEBがつくれるの?

建物のエネルギー消費量を減らすためのさまざまな技術を適切に組み合わせて導入することで、ZEBを実現することができます。

このZEBを実現するための技術は、消費するエネルギーを減らすための技術(省エネ技術)とエネルギーを創るための技術(創エネ技術)に分けられます。

実際にZEBを実現する場合には、
①パッシブ技術によってエネルギーの需要を減らし、
②どうしても必要となる需要についてはアクティブ技術によってエネルギーを無駄なく使用し、
③そのエネルギーを創エネ技術によって賄うといったステップで検討することが重要です。

また、建物の運用段階にでは、どこにエネルギーの無駄が発生しているか、どのように効率的に設備を運用するかなど、エネルギーをマネジメントする技術(エネマネ技術)も重要です。このエネマネ技術によって継続的なエネルギー消費量の削減を図ることができます。

このような省エネ技術・創エネ技術・エネマネ技術を導入するためにはもちろん初期投資が必要になりますが、ZEBを実現するような建物に対しては、国による補助事業が実施されています。

新築じゃなくてもZEBにできるの?

既存の建物では、既にそこで働く人々や建物を利用している人々がいるため長期の改修工事が困難、既設の設備システムを大きく変えることが困難といった、新築時にはない課題が存在します。そのため、ZEBを実現するためのプランニングにおいて一定の制約があることは事実です。
しかし、既存建築物の仕様等を踏まえ、ZEBを実現するためのプランニングを工夫することで、ZEB化を実現した事例も存在します。(具体的な改修によるZEB化の事例はこちら)

既存建築物を改修によってZEB化する際のポイントは以下の3点が挙げられます。

①改修ZEBの実現はそんなに難しくない!?

②ZEBに改修することでどんなメリットがあるの?

③ZEB化改修を考えたいけどまず何から始めたらいいの?

また、特にテナントビルにおいては、オーナーとテナントが協働して省エネに取り組むグリーンリース※のような仕組みもあり、実際にオーナー・テナント間でグリーンリース契約を結んで省エネを実現している事例も存在します。
※国土交通省によるグリーンリースの定義:ビルオーナーとテナントが協働し、不動産の省エネなどの環境負荷の低減や執務環境の改善について契約や覚書等によって自主的に取り決め、その取り決め内容を実践することをいいます。この取組により、ビルオーナー・テナント双方が光熱費削減等の恩恵を受け、Win-Winの関係を実現します。

①改修ZEBの実現はそんなに難しくない!?

上述のとおり、既存建築物を改修する際には、工事の物理的な制約や、建物利用者との関係によるスケジュール上の制約など、新築時と比べて様々な制約が存在します。一方で、そのような制約のある既存建築物のZEB化事例としては、先進技術を豊富に採用し大きなコストを投じて改修した事例ばかりではありません。むしろ、既存の汎用的な技術を組み合わせることで、ZEB Readyの水準までエネルギー性能を高めているケースも多く存在しています。

これらの汎用的な技術は、建物を維持管理していくうえで必要な通常の修繕や設備更新時に採用される技術に対して、少しの手間やアイデアを加えることで導入が可能なものが多く、大幅なコストアップを招くものではありません。逆に採用する技術によっては、ZEB化を目指すことでコストダウンを実現可能となる可能性もあります。

まずは、「改修によるZEB化は技術的にハードルが高く大幅なコストアップが発生する」といった先入観を捨てて、「改修ZEBの実現はそんなに難しくない!」という考え方で最初の一歩を踏み出してみてください。

②ZEBに改修することでどんなメリットがあるの?

既存建築物に対して、多少なりともコストアップの可能性があるZEB化改修を進めることでどんな効果があるのでしょうか。もちろん、国全体で見ればCO2の削減効果がカーボンニュートラル実現に向けた目標の一助となるといった効果が期待できます。

一方で、個々の建物オーナーや建物の利用者にとっての具体的なメリットとしては以下のような点が挙げられます。

  • 外皮性能の向上、高効率設備の導入、最適な設備容量への更新などによりZEBへ改修することで、運用時におけるエネルギーコストの削減、将来的なさらなる改修コストの削減が可能
  • 室内環境の改善により、快適性や知的生産性といったウェルネスを向上させることにもつながる
  • テナントビルの場合には、このような建物への改修が賃料にプラスの影響をもたらす可能性がある

環境省では、「リーディングテナント行動方針」を策定し、①エネルギー性能が高い、②再生可能エネルギーの活用が可能、③快適性・知的生産性・快適性が高い建物に対するテナントのニーズを取りまとめて発信する施策を行っています。このようなテナントニーズに応えるものとして、 ZEBへの改修はこれからの既存テナントビルにとって、対応が求められる取り組みであると同時に、テナント誘致やビルの収益改善に向けた武器としてとらえることもできます。

③ZEB化改修を考えたいけどまず何から始めたらいいの?

既存建築物を改修してZEB化しようと考える際に、まず何から始めたら良いのでしょうか。汎用技術の組み合わせで実現可能といっても、すぐに仕様を決めて設計を委託し、設備更新を進められるというオーナーはほとんどいないと考えられます。

ZEB化改修を進めるための主なステップは以下のとおりです。

①保有建物に関する現状把握(図面、設備の計装図等の確認)

②現状資料を基に専門家(ZEBプランナー)に相談

③ZEB化までの計画を作成

④改修工事

⑤改修後建物の適切な運用

まずは自らの建物の現状を知るために、竣工時やこれまでに行った改修の際に作成された図面等を集める必要があります。その上で、これらの資料を基に専門家に相談することになります。専門家との協議では、ZEBに向けて目指す水準、改修のスケジュール、費用について検討を進めます。その後、改修工事を経てZEBとして生まれ変わった建物を運用していくことになります。なお、実際に計画通りエネルギー消費量を削減するためには、工事して終わりではなく適切に運用していくことも重要な視点です。

相談先となるZEBの計画や工事に対する実績を持った専門家として、『ZEBプランナー』が国の制度において登録・公表されています。この中から、地域や建物用途など、自らの属性に合った専門家を探して相談することが可能です。

また、このようなステップの中で、改修によってZEBを実現するという当初のモチベーションを維持するためには、計画を立てた段階で外部からの認証を取得することも効果的です。

参照元:環境省/ゼブポータル

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