給湯設備の保温仕様と節湯器具とは?省エネ判定員が解説

給湯設備の一次エネルギー消費量の計算において給湯機の能力値以外に影響を及ぼす要素があります。

これらは、能力値ほど一次エネルギー消費量に影響は及ぼしませんが、

エネルギーの消費効率を上げるためには必要不可欠な要素です。

この記事を読むと、以下のようなことを知ることができます。

・一次エネルギー消費量に影響を及ぼす能力値以外の要素
・それらの要素(保温仕様・節湯器具)の評価方法
・評価の際の注意事項

給湯設備の能力値以外の要素マスターして、楽に申請手続きを突破しましょう!

一次エネルギー消費量に影響を及ぼす能力値以外の要素

能力値以外で、一次エネルギー消費量に影響を及ぼす要素は以下のとおりです。

配管の保温仕様
節湯器具

配管の保温仕様

給湯配管から熱が逃げることによる給湯機のエネルギー消費のロスを減らすため、

配管を断熱(保温)することを指します。

ロックウール断熱材などで給湯配管を保温することにより、

熱損失が減り、エネルギー消費の効率が向上します。

節湯器具

使用するお湯の量を節約することで、

給湯機のエネルギー消費を抑えることができる器具のことを指します。

自動給湯栓などが節湯器具に該当します。

保温仕様

保温仕様は「モデル建物法入力マニュアル」で定められた項目から選択します。

出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法 入力マニュアル」【 modelv3_manual_20240401.pdf (lowenergy.jp)

保温仕様とその条件は、以下の表のとおりです。

保温仕様の選択肢 その条件
保温仕様A ・呼び径が 32 未満の配管:保温材(※)の厚さが 30 ㎜以上
・呼び径が 32 以上の配管:保温材(※)の厚さが 40 ㎜以上
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールの保温筒とする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の冷温水管の保温材の厚さに従ったもの】
保温仕様B ・呼び径が 32 未満の配管:保温材(※)の厚さが 20 ㎜以上
・呼び径が 32 以上 65 未満の配管:保温材(※)の厚さが 30 ㎜以上
・呼び径が 65 以上の配管:保温材(※)の厚さが 40 ㎜以上とした仕様
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールの保温筒とする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の蒸気管の保温材の厚さに従ったもの】
保温仕様C ・呼び径が 100 未満の配管:保温材(※)の厚さが 20 ㎜以上
・呼び径が 100 以上の配管:保温材(※)の厚さが 25 ㎜以上とした仕様
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールの保温筒とする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の給湯管の保温材の厚さに従ったもの】
保温仕様D ・呼び径が 100 未満の配管:保温材(※)の厚さが 20 ㎜以上
・呼び径が 100 以上の配管:保温材(※)の厚さが 25 ㎜以上とした仕様
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールとする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の給湯管の保温材の厚さに従ったもの】
裸管 上記以外の場合

・配管径によって求められる保温厚さが異なること
・A~Cの仕様に応じて保温材の厚さが異なること
・保温仕様AからCの保温材は保温筒の指定があること

これらが保温仕様を評価する際のポイントとなります。

また、モデル建物法入力マニュアルには、この他の選択肢もあります。

・保温仕様2または3
・保温仕様1

これらの選択肢は「改定前の選択肢」と呼ばれ、特別な事情、やむを得ない事情がある場合を除き、

入力しないことが求められています。表中の選択肢で保温仕様を評価しましょう。

専用樹脂配管の取り扱い

以下の条件を満たす専用樹脂配管は、

保温されていない場合でも「保温仕様D」を選択することができます。

・自動水栓水洗一体型電気温水器(元止め式)に付属するもの
・長さが数十㎝程度のもの

節湯器具

節湯器具も保温仕様と同様「モデル建物法入力マニュアル」で定められた項目から選択します。

節湯器具の種類とその条件は、以下の表のとおりです。

節湯器具の選択肢 その条件
自動給湯栓 ・洗面に設置され、使用に合わせて自動で給水する給湯栓で電気的に開閉し、手を遠ざけると自動で止水するもの
※公衆浴場などにある、一定時間お湯を吐出した後に自動で止水する水栓については「自動給湯栓」とはみなさない。
節湯B1 浴室シャワー水栓において、「小流量吐水機構を有する水栓の適合条件」を満たす湯水混合水栓。
※小流量吐水機構を有する水栓の条件
節湯水栓の判断基準に定められた試験方法にて吐水力を測定し、その値が次の条件に適合すること。
・ 流水中に空気を混入させる構造を持たない:0.60 N 以上
・ 流水中に空気を混入させる構造を持つ  :0.55 N 以上
上記以外
※2バルブ水栓については、上記仕様の有無にかかわらず、「無」となる

・給湯の用途によって選択できる節湯器具の種類が異なること
・2バルブ水栓の場合は節湯器具を評価できないこと

これらが節湯器具を評価する際のポイントとなります。

実務上は、圧倒的に自動給湯栓を採用するケースが多いです。

節湯B1の条件は少し難しい内容になるため、別の機会にお話します。

まとめ

今回は、給湯設備の保温仕様と説諭器具について解説しました。

・保温仕様と節湯器具は、給湯設備のエネルギー効率を上げるための要素
・保温仕様は配管径・断熱材厚さ・断熱材種類で決定される
・保温仕様の選択肢の中には、推奨されていないものが存在する
・節湯器具は2種類。給湯用途によっては採用できないものがある
・2バルブ水栓の場合、節湯器具を評価することはできない

次回は、非空調コア部を算定する際のケーススタディを紹介します。

お楽しみに!!

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