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法改正により2025年4月からすべての非住宅建築物に対して省エネ基準への適合義務が課せられます。
これにより一部の例外を除き、建築物の工事着手前に省エネ適判の手続きをしなくてはなりません。
特に、床面積が300㎡未満の非住宅建築物は着工棟数も多いため、
多くの設計者の方にとって省エネ適判の手続きをどう処理するかが課題となっています。
これを踏まえ、従来より簡易な計算方法として、
「モデル建物法(小規模版)」という計算方法が利用できる予定となっています。
この記事を読むと以下の内容について理解いただけます。
・非住宅建築物の省エネ性能の指標とその計算方法
・モデル建物法(小規模版)の概要
・他の計算方法との違い
床面積300㎡未満の小規模非住宅を設計される方へ、
モデル建物法(小規模版)をマスターして2025年の法改正を乗り切りましょう。
省エネ適判などの手続きについて知りたい方は、こちらの記事で内容をご確認いただけます。
非住宅の省エネ性能の評価方法
省エネ性能を評価する指標
建築物の省エネ性能は、一次エネルギー消費量で評価します。
一次エネルギー消費量というのは、
1年間で使われている電気やガスなどのエネルギー消費を数値化したものです。
省エネ適判などの手続きにおいては、国が定めた基準となる一次エネルギー消費量に対し、
設計する建物の一次エネルギー消費量がどれだけ小さいか、
基準値に対する設計値の割合で省エネ性能を評価します。
この指標を「BEI(びーいーあい)」と言います。
BEI = 設計一次エネルギー消費量 / 基準一次エネルギー消費量
一次エネルギー消費量について詳しく知りたい方は、こちらの記事で内容をご確認いただけます。
BEIを評価できるプログラム
現在、非住宅建築物のBEIを計算する方法は、3種類あります。
・標準入力法
・モデル建物法
・小規模版モデル建物法(2025年4月に廃止予定)
それぞれの特徴は下表のとおりです。
計算方法 | 標準入力法 | モデル建物法 | 小規模版モデル建物法 |
計算のやり方 | 所定のEXCELに必要な情報を入力したものをWEBプログラムで読み込む | 所定のEXCELに必要な情報を入力したものをWEBプログラムで読み込む | WEBプログラム上に必要な情報を直接入力する |
計算の正確さ | 最も正確 | ある程度の正確性 | 制度は低い |
計算の手間 | 最も手間がかかる(モデル建物法の数倍程度) | 比較的簡単 | 最も簡単 |
活用できる主な手続き | 省エネ適判 | 省エネ適判 | 説明義務制度(省エネ適判には活用できない) |
お勧め度 | 正確な計算をしたい方にお勧め | 最もお勧め | お勧めできない |
2025年4月に向けて、小規模版モデル建物法が廃止される一方、
今回紹介するモデル建物法(小規模版)が利用可能となる予定です。
モデル建物法(小規模版)とは
主な特徴
モデル建物法の計算をより簡易にしたものがモデル建物法(小規模版)となります。
より比較がしやすいよう、モデル建物法(通常版)とモデル建物法(小規模版)と
分けて表現されることもあります。
モデル建物法(小規模版)の活用範囲
モデル建物法(小規模版)には計算を活用できる範囲が決まっています。
その範囲は、以下のとおりです。
・非住宅建築物であること
・建物全体の床面積が300㎡未満であること
小規模の非住宅のみに限定された計算方法であることがポイントです。
注意事項
モデル建物法(小規模版)を活用する際の注意事項は以下のとおりです。
・省エネ適判に使用できるのは2025年4月以降であること
・小規模版モデル建物法とは異なる計算方法であること
モデル建物法(小規模版)は2024年10月より、
一次エネルギー消費量の計算プロブラム(現行版)に実装される予定です。
活用範囲が床面積300㎡未満となるため、省エネ適判で活用できるのはまだ先となります。
実際、どのように計算をすればよいのかは、
「非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム(次期更新版)」
でご確認いただけます。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム
【 非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム (lowenergy.jp) 】
モデル建物法(通常版)との違い
モデル建物法(小規模版)を活用した計算方法については、
「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」でご確認いただけます。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」【 small_modelv3_manual_beta_20240909.pdf (lowenergy.jp) 】
モデル建物法(通常版)との主な違いを簡単にご説明します。
外皮に関する違い
外皮に関する主な違いは以下のとおりです。
・計算対象部分の外周長さと非空調コア部は評価しない
・外気に接する床は評価しない(外壁・屋根・窓の仕様のみ)
・部位の断熱仕様は主要なもののみを入力する
・外壁・屋根などの外皮面積は評価しない
外皮面積を評価しない点(外皮面積を計算しなくても良い点)がポイントです。
詳しくは、別の記事で紹介する予定です。
設備に関する違い
設備に関する主な違いは以下のとおりです。
・評価できる空調熱源の種類が少ない
・照明設備を評価する室用途が少ない
・給湯設備を評価する給湯用途が少ない
・昇降機は評価しない
・コージェネレーション設備は評価しない
照明設備・給湯設備の評価対象が少ない点がポイントです。
詳しくは、別の記事で紹介する予定です。
まとめ
今回は、床面積300㎡未満の非住宅建築物に活用できる「モデル建物法(小規模版)」
について解説しました。
・モデル建物法(通常版)を簡易にしたものがモデル建物法(小規模版)
・建物全体の床面積が300㎡未満の非住宅建築物のみが対象
・省エネ適判に活用できるのは2025年4月以降
・外皮面積を評価しないため、外皮面積の算定は不要
・照明設備・給湯設備を評価対象が少ないため、手間は小さい
次回は、モデル建物法(小規模版)のポイント(外皮編)を解説します。
お楽しみに!