省エネ法の対象

現行の建築物省エネ法では、中・大規模(300㎡以上)の非住宅の新築、

増改築(「新築等」)を行う建築主に対して省エネ基準への適合義務を課しています。

また、基準適合義務の対象外である、

中・大規模(300㎡以上)の住宅の新築等を行う建築主に対しては、

所管行政庁への届出義務を課しています。

また、小規模の住宅については説明義務があります。

カーボンニュートラルを加速させるために

2020年10月に、当時の菅内閣総理大臣は所信表明演説において、

日本政府は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするため、

温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。


また、2021年4月の地球温暖化対策推進本部及び米国主催の気候サミットにおいて、

「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、

2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。

さらに、50%の高みに向けて、挑戦を続けていく」ことを表明しました。

令和4年の建築物省エネ法改正に伴う、省エネ基準適合義務の対象拡大

このことにより、2030年度の温室効果ガス46%削減の実現に向け、

建築物分野においても、省エネ対策の取組を一層進める必要性が高まりました。


住宅や小規模な建築物を含め、省エネ性能を確保するため、

令和4年に建築物省エネ法改正が実施されました。

施行日は、公布の日から3年以内となります。

これによりすべての建築物について、省エネ基準への適合が義務付けられ、

基準適合義務の対象が、小規模非住宅、住宅にも拡大されます(第11条第1項改正)。

※ただし、エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして

政令で定める規模(10㎡を想定)以下のものを除きます。

増改築を行う場合の省エネ基準適合を求める範囲も見直されます。

現行法では増改築後の建築物の全体が対象でしたが、

改正後は、省エネ基準適合を求められるのは増改築を行う部分のみになります(第11条第1項改正)。

また、基準適合義務の拡大に伴って、届出義務(第19条)は廃止されます。(第19条削除)。

省エネ基準適合に係る規制の概要

令和4年の省エネ法改正に伴い、すべての新築住宅・非住宅が省エネ法の対象となり、

省エネ基準適合が義務付けされます。

省エネ基準適合は、省エネ基準建築確認の中で、

構造安全規制等の適合性審査と一体的に実施されます。

(1F・200㎡以下で建築士が設計する場合は審査省略)。

また、中小工務店や審査側の体制整備等に配慮して十分な準備期間を確保し、

2025年度に施行予定となっています。

施行日以後に工事に着手する建築物の建築が対象です。

新築の場合

改正に伴い、省エネ基準への適合義務の対象が拡大されました(図「基準適合-1」参照)。

拡大に伴い、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。

省エネ法の対象

基準適合-1
「【国土交通省】【建築物省エネ法第10条】省エネ基準適合義務の対象拡大について」より引用

増改築の場合

これまでは増改築後の建築物全体が対象でしたが、

改正後は、増改築を行う部分にのみ省エネ基準適合が求められることとなりました。

増築部分の壁、屋根、窓などに、一定の断熱材や窓等を施工したり、

増築部分に一定性能以上の設備(空調、照明等)を設置することで、

増改築部分の基準適合が求められます。

省エネ法の対象

「【国土交通省】【建築物省エネ法第10条】省エネ基準適合義務の対象拡大について」より引用

適合性判定の手続き・審査

法改正により、省エネ法の適合義務対象が全ての建築物に拡大されることになり、

対象件数が大幅に増加し、申請側・審査側双方の負担の増大が見込まれることから、

審査の簡素・合理化が求められています。

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