省エネ性能に優れた住宅を求めるお客様の疑問に答えるためには、建築物省エネ法に関する基本的な知識を理解しておくことが重要です。専門的な知識が必要な省エネ計算や外皮計算などは申請代行サービスを活用しましょう。
建築物省エネ法の目的・対象建築物・省エネ計算方法とは
昨今、省エネ性能に優れた住宅のニーズが高まっています。省エネ性能に関心がある一方、十分な知識を持たないため正しい判断ができず、住宅の購入や建築を躊躇する方もいます。そのような方々に対して有益な情報を提供し、省エネ性能の理解度を深めてもらうことは建築・住宅業界における重要な課題の一つです。こちらでは、省エネ性能を説明する際の基本的な知識である建築物省エネ法について解説いたします。
建築物省エネ法の概要
建築物省エネ法は2015年に制定された法律で、省エネ性能の基準、計算方法、手続きなどの内容が定められています。正式名称は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」です。日本国内のエネルギー消費量のうち、建築物によるエネルギー消費量は増加傾向にあります。特に東日本大震災以降は逼迫しており、さらに地球温暖化の進行による影響も受けています。建築物のエネルギー消費を減らすため、様々な取り組みを行うことを目的に制定されました。
対象の建築物は?
建築物省エネ法は大きく規制措置(適合義務・届出義務・説明義務)と誘導措置(性能向上計画認定・認定表示)で構成されます。規制措置には対象の建築物があり、適合義務は床面積が300平方メートル以上の中規模以上の非住宅が該当します。一方、届出義務は適合義務の対象には該当しない中規模の住宅、説明義務は床面積が300平方メートル未満の小規模の住宅・非住宅が対象です。誘導措置に関しては任意です。
ただし法改正により、2025年4月から原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。そのため、省エネ基準を満たした住宅設計をはじめ、省エネ性能が備わった建築構造・設備への対応などが必要になることを押さえておきましょう。
省エネ計算の方法は?
住宅の省エネ計算では、一次エネルギー消費量基準と外皮基準の2点を重視します。
まず省エネ基準に適合しているかどうかを判断するには、設計仕様で算出した設計一次エネルギー消費量が基準値以下になる必要があります。
計算式は以下のとおりです。なお、一次エネルギー消費性能はBEIの指標を用います。
「BEI=設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量」
外皮基準は住宅の窓や外壁などの断熱性能の基準を測定する際に用います。外皮平均熱貫流率「UA値」、冷房期の平均日射熱取得率「ηAC値」で構成されています。
それぞれの計算式は以下のとおりです。
「UA=外皮総熱損失量÷外皮総面積」
「ηAC=総日射熱取得量÷外皮総面積×100」
建設地の地域区分でそれぞれ基準値が定められているため、確認したうえで計算することが大切です。
省エネ基準を満たした住宅や省エネ性能に優れた住宅には、フラット35Sや住宅ローン減税などの支援措置が用意されています。これらの支援を活用するにあたり、省エネ計算や外皮計算といった各種計算・届出が必要です。計算ツールを使っての計算も可能ですが、計算ミスの発生などを回避するなら専門的な知識と豊富な実績を持つ専門家への相談・依頼をご検討ください。