
このニュースをざっくり説明すると…
長期優良住宅の認定には、劣化対策、耐震性、省エネルギー性、維持管理の容易性、住戸面積、居住環境、維持保全計画、災害配慮の8基準への適合が必要です。新築戸建てでは、劣化対策等級3、耐震等級2以上、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量等級6以上などが求められます。
さらに、床下点検口や配管経路、30年以上の維持保全計画など、等級以外の仕様にも注意が必要です。着工前に構造計算・省エネ計算・確認申請図書を整合させて準備することが、設計変更や申請の手戻りを防ぐポイントです。
長期優良住宅は、単に耐震性や断熱性が高い住宅ではありません。構造躯体の耐久性、設備配管の維持管理、省エネルギー性能、住戸面積、将来の点検計画、建築地の災害リスクまで含めて審査される認定制度です。
国土交通省の2026年7月公表資料によると、2025年度における新築一戸建て住宅の認定戸数は15万5,838戸となり、新設住宅着工戸数に対する割合は49.8%に達しました。長期優良住宅は、もはや一部の高性能住宅だけに採用される制度ではなく、新築戸建て住宅の約半数が取得する認定になっています。
本記事では、新築の一戸建て住宅に共通する8つの認定基準を中心に、必要となる等級や数値を設計実務の視点から解説します。共同住宅等では、これらに「可変性」と「バリアフリー性」が加わるため、その違いにも注意が必要です。
長期優良住宅に必要な8つの認定基準
| 認定基準 | 新築一戸建て住宅の主な基準 |
|---|---|
| 劣化対策 | 劣化対策等級3に加え、構造別の追加措置 |
| 耐震性 | 耐震等級2以上、免震建築物など所定の基準 |
| 省エネルギー性 | 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上 |
| 維持管理・更新の容易性 | 維持管理対策等級3(専用配管) |
| 住戸面積 | 原則75㎡以上、少なくとも1つの階が40㎡以上 |
| 居住環境 | 地区計画、景観計画、建築協定などとの調和 |
| 維持保全計画 | 30年以上の計画を作成し、点検間隔は10年以内 |
| 災害配慮 | 建築地の災害リスクに応じた措置 |
この表は概要であり、実際の適合条件は構造、地域区分、建築地、所管行政庁の運用によって変わります。特に耐震性と劣化対策は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造で確認方法が異なります。
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認定基準1 劣化対策は等級3だけでは足りない
劣化対策では、住宅性能表示制度における「劣化対策等級3」への適合が基本です。等級3は、通常想定される自然条件や維持管理のもとで、構造躯体を数世代にわたって使用するための対策が講じられていることを示します。
ただし、長期優良住宅は等級3を取得するだけではなく、構造の種類に応じた追加措置が必要です。
木造では、区分された床下空間と小屋裏空間ごとに点検口を設置し、床下空間の有効高さを原則330mm以上確保します。床下点検口から一部しか確認できない計画や、基礎の立上がりによって床下へ進入できない計画は、設計段階で見直しが必要になる場合があります。
鉄骨造では、柱、梁、筋かいなどに使用する鋼材の厚さに応じた防錆措置が必要です。鉄筋コンクリート造では、コンクリートの水セメント比とかぶり厚さを確認します。現行基準では、かぶり厚さの条件に応じて水セメント比45%以下または50%以下などの基準が定められています。
認定基準2 耐震性は原則として耐震等級2以上
耐震性については、住宅性能表示制度の耐震等級2または等級3に適合する方法が一般的です。免震建築物とする方法や、限界耐力計算などによって所定の変形量以下であることを確認する方法も認められています。
木造住宅では、2025年4月から省エネ化などによる建物重量の増加を反映した新しい壁量基準と柱の小径基準が施行されています。さらに、旧基準を利用できる経過措置は2026年3月で終了したため、2026年4月以降は現在の建物重量や仕様を反映した基準で壁量を確認しなければなりません。過去案件の壁量計算書をそのまま流用するのは危険です。
認定だけを考えれば耐震等級2で対応できますが、施主への提案や地震保険料の割引まで考慮して、耐震等級3を標準仕様とする住宅会社もあります。どの等級を採用するかは、構造計画とコストの両面から早い段階で決める必要があります。
認定基準3 省エネルギー性はZEH水準が必要
新築の長期優良住宅では、断熱等性能等級5以上と、一次エネルギー消費量等級6以上の両方に適合しなければなりません。一次エネルギー消費量等級6は、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上削減する水準で、一般的にはBEI0.8以下が目安となります。
断熱等性能等級5の外皮性能基準は地域区分によって異なります。
| 地域区分 | UA値の基準 | ηAC値の基準 |
|---|---|---|
| 1・2地域 | 0.40以下 | 基準なし |
| 3地域 | 0.50以下 | 基準なし |
| 4地域 | 0.60以下 | 基準なし |
| 5地域 | 0.60以下 | 3.0以下 |
| 6地域 | 0.60以下 | 2.8以下 |
| 7地域 | 0.60以下 | 2.7以下 |
| 8地域 | 基準なし | 6.7以下 |
例えば、東京の多くが該当する6地域では、UA値0.60W/㎡・K以下、ηAC値2.8以下が等級5の目安です。一次エネルギー消費量については、外皮性能だけでなく、暖冷房、換気、給湯、照明設備などを含めて計算します。
断熱材の厚さだけを増やしても、窓の性能や設備効率によっては等級6を満たせません。外皮計算と一次エネルギー消費量計算を並行して進めることが重要です。
認定基準4 設備配管を交換しやすい構造にする
維持管理・更新の容易性では、給水管、排水管、給湯管などについて、構造躯体を大きく壊さずに点検、清掃、補修、交換できることが求められます。
一戸建て住宅では、原則として維持管理対策等級3の専用配管基準に適合させます。コンクリート内へ配管を埋め込まないこと、点検口を設けること、排水管の清掃や交換ができる経路を確保することなどが主な確認内容です。
共同住宅等では、専用配管に加えて、共用配管の維持管理対策等級3と、共用排水管の更新対策等級3も確認されます。
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認定基準5 住戸面積は原則75㎡以上
一戸建て住宅の住戸面積は、原則として75㎡以上が必要です。さらに、少なくとも1つの階について、階段部分を除いた床面積を40㎡以上確保します。
共同住宅等の住戸面積は原則40㎡以上です。ただし、所管行政庁は地域の実情を考慮し、独自の面積基準を定めることができます。そのため、全国一律に75㎡または40㎡を満たせば必ず認定されるとは限りません。
狭小地の3階建て住宅では、延べ面積が75㎡を超えていても、階段を除いた各階の面積が40㎡に届かない場合があります。間取りが完成してから気付くと大きな変更になるため、基本設計の段階で確認しましょう。
認定基準6 地域の居住環境と調和させる
居住環境の基準では、地区計画、景観計画、まちなみ計画、建築協定、景観協定などが定められている場合、その内容と住宅計画を調和させる必要があります。
この項目には全国共通の等級や数値がありません。所管行政庁ごとに確認する区域や提出書類が異なり、都市計画施設の区域内などでは認定を受けられない場合もあります。
外壁や屋根の色彩、道路からの壁面後退、緑化、建物用途などが確認されることもあるため、認定申請の直前ではなく、敷地調査時に確認する必要があります。
認定基準7 30年以上の維持保全計画を作成する
長期優良住宅は、性能の高い住宅を建てるだけでは認定されません。構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分、給水・排水設備について、点検の時期と内容を定めた維持保全計画を作成します。
維持保全期間は30年以上とし、点検の間隔は工事完了または直近の点検・修繕から10年以内に設定します。また、地震や台風の後には臨時点検を行い、必要に応じて調査、修繕、改良を実施します。
認定後は、点検や修繕の記録を作成して保存しなければなりません。所管行政庁から報告を求められる場合もあるため、施主へ維持保全の義務と記録保存について説明しておくことが重要です。
認定基準8 建築地の災害リスクへ配慮する
災害配慮基準では、自然災害による被害の発生防止または軽減に配慮した計画であることが求められます。
土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、災害危険区域などに該当する場合、認定しない、または一定の対策を条件として認定するなど、所管行政庁が地域のリスクに応じた基準を定めます。全国共通の数値基準ではないため、敷地ごとに行政庁へ確認が必要です。
ハザードマップだけで判断せず、法令上の指定区域と所管行政庁の長期優良住宅認定基準を照合しましょう。
共同住宅では可変性とバリアフリー性も必要
共同住宅や長屋では、8つの基準に加えて可変性を確認します。新築では、原則として躯体天井高さを2,650mm以上確保し、将来の間取り変更や配管更新に対応できる空間を設けます。
共同住宅等では、共用廊下、階段、エレベーターなどについて、高齢者等配慮対策等級3の一部基準にも適合させます。一戸建て住宅には、この共用部分のバリアフリー基準は適用されません。
長期優良住宅は着工前の認定申請が必要
新築住宅の認定を受ける場合は、原則として着工前に所管行政庁へ認定申請を行います。一般的には、先に登録住宅性能評価機関へ長期使用構造等の確認を申請し、交付された確認書または住宅性能評価書を添付して所管行政庁へ申請します。
工事完了後には、認定計画どおりに工事が完了したことを所管行政庁へ報告します。着工後に認定を取りたいと考えても間に合わないため、確認申請、省エネ計算、構造計算と同時期に準備を進める必要があります。
等級だけでなく追加仕様まで確認することが重要
長期優良住宅では、「耐震等級2」「断熱等性能等級5」「劣化対策等級3」といった数字だけを確認しても十分ではありません。
木造の床下高さや点検口、配管経路、住戸面積、維持保全計画、災害区域など、住宅性能評価の等級だけでは判断できない条件があります。設計後半に不足が判明すると、基礎、間取り、天井高さ、設備配管などの変更が必要になる可能性があります。
基本設計の段階で認定取得の方針を決め、構造計算、省エネ計算、申請図書を整合させて進めることが、手戻りを防ぐ最も確実な方法です。
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長期優良住宅の認定には、耐震等級の確認、外皮性能・一次エネルギー消費量計算、劣化対策、設備配管、維持保全計画、所管行政庁ごとの居住環境・災害配慮基準など、幅広い確認が必要です。確認申請や住宅性能評価と並行して進める場合は、図面や計算書の不整合にも注意しなければなりません。
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