
このニュースをざっくり説明すると…
省エネ計算ツールには、住宅・非住宅向けの無料公式プログラムと、外皮面積の自動集計や図面連携、複数案比較などに対応した有料ソフトがあります。無料ツールは申請件数が少ない設計者や基準適合の確認に向き、有料ツールは住宅・共同住宅・非住宅の計算を継続的に行う事業者の業務効率化に適しています。
選定時は、対象建物、計算方法、申請への利用可否、公式Webプログラムとの連携、導入費・更新費を確認することが重要です。案件数が少ない場合や複雑な用途では、ツール購入より専門家への外注が合理的なケースもあります。
2025年4月から、原則としてすべての新築住宅・非住宅建築物に省エネ基準への適合が義務付けられました。さらに2026年4月には、中規模非住宅建築物に関する省エネ基準の見直しも行われています。設計者にとって、省エネ計算ツールは一部の専門案件だけで使用するものではなく、確認申請や省エネ適判を進めるための基本的な実務ツールになりました。国土交通省の住宅向け資料や非住宅向け計算プログラムも、2026年に入ってから継続的に更新されています。
ただし、省エネ計算ツールはどれを選んでも同じ結果になるわけではありません。住宅と非住宅では使用するプログラムが異なり、外皮性能計算、一次エネルギー消費量計算、仕様基準、モデル建物法、標準入力法など、目的に応じて使い分ける必要があります。
本記事では、2026年8月時点で利用できる無料・有料の省エネ計算ツール12種類を、申請実務での使いやすさ、対象建物、計算方法、導入効果という視点から比較します。
省エネ計算ツールは「申請用」と「設計検討用」に分けて考える
省エネ計算ツールを選ぶ際は、最初に「計算結果を申請に使用するのか」「設計段階で性能を比較したいのか」を整理します。
建築研究所などが提供する無料のWebプログラムは、法令に基づく計算結果を出力するための基本となるツールです。住宅向けには外皮性能や一次エネルギー消費量の計算プログラムがあり、非住宅向けには標準入力法、モデル建物法、小規模版モデル建物法が用意されています。非住宅向けプログラムの計算結果は、公的な届出や補助金申請にも利用できます。
一方、有料ソフトには、図面から外皮面積を拾い出す機能、複数案を比較する機能、公式WebプログラムとのAPI連携、申請用帳票の作成機能などがあります。計算結果を出すだけでなく、入力や修正にかかる時間を削減できることが、有料ソフトを導入する主な理由です。
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無料・有料の省エネ計算ツール12選
| ツール名・公式サイト | 料金区分 | 主な対象 | 向いている業務 |
|---|---|---|---|
| 住宅・住戸の外皮性能の計算プログラム | 無料 | 戸建住宅・共同住宅 | UA値・ηAC値などの外皮性能計算 |
| エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版) | 無料 | 戸建住宅・共同住宅 | 暖冷房、換気、給湯、照明などの一次エネルギー消費量計算 |
| 仕様基準に基づく仕様表作成ツール | 無料 | 主に木造戸建住宅 | 仕様基準による省エネ基準への適合確認 |
| エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法 | 無料 | 非住宅建築物 | 室用途や設備仕様を反映した詳細な省エネ計算 |
| エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)モデル建物法 | 無料 | 非住宅建築物 | 省エネ適判やBELS申請に向けた効率的な計算 |
| モデル建物法(小規模版) | 無料 | 小規模な非住宅建築物 | 入力項目を抑えた省エネ基準への適合確認 |
| ホームズ君「省エネ診断エキスパート」 | 有料 | 主に木造住宅 | 外皮計算、一次エネルギー計算、等級判定、断熱仕様の比較 |
| HOUSE-省エネ | 有料 | 戸建住宅 | 外皮面積の自動集計、省エネ計算、届出書類の作成 |
| SAVE-住宅 | 有料 | 戸建住宅・共同住宅 | 共同住宅の複数住戸計算、根拠図面・計算書の作成 |
| SAVE-建築 | 有料 | 非住宅建築物 | 標準入力法、モデル建物法、省エネ適判、ZEB・BELSの検討 |
| ARCHITREND ZERO | 有料 | 主に戸建住宅 | CAD、確認申請図、外皮計算、一次エネルギー計算の連携 |
| BEST省エネ基準対応ツール | 有料 | 非住宅建築物 | 複雑な設備方式の評価、ZEB・BELS、省エネ適判の詳細検討 |
住宅用の公式Webプログラムは「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」、非住宅用は「非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」に集約されています。申請に利用する際は、保存済みの旧ページではなく、各ポータルから現行バージョンへアクセスしてください。
有料製品は対象建築物や機能が異なります。ホームズ君とHOUSE-省エネは主に戸建住宅、SAVE-住宅は共同住宅を含む住宅、SAVE-建築とBESTは非住宅向けです。ARCHITREND ZEROは住宅CADを中心に、外皮性能計算や一次エネルギー消費量計算を設計データと連携できます。
1 住宅・住戸の外皮性能計算プログラム
住宅の外皮平均熱貫流率であるUA値や、冷房期の平均日射熱取得率であるηAC値を計算する公式プログラムです。戸建住宅だけでなく、共同住宅の住戸評価にも使用できます。
無料で利用でき、外壁、屋根、床、基礎、窓、ドアなどの面積と仕様を入力して外皮性能を算定します。年間の申請件数が少なく、外皮面積を自社で拾い出せる設計者であれば、まず選択肢となるツールです。住宅向けの計算方法や対応プログラムは、建築研究所から技術情報として公開されています。
ただし、図面から外皮面積を自動で拾う機能はありません。複雑な形状や共同住宅では、入力前の面積集計に時間がかかります。
2 エネルギー消費性能計算プログラム・住宅版
暖房、冷房、換気、給湯、照明、太陽光発電などを入力し、住宅の一次エネルギー消費量を計算する公式Webプログラムです。
省エネ基準への適合、一次エネルギー消費量等級、ZEH、BELSなどを検討する際の基本となります。外皮性能計算で算出したUA値やηAC値と、設備機器の仕様を組み合わせて評価します。
2026年時点では、計算結果の登録方法や申請手続きに関する案内も更新されているため、過去に保存した計算結果だけを流用せず、申請時点の現行プログラムと登録手順を確認する必要があります。
3 仕様基準に基づく仕様表作成ツール
断熱材、窓、暖冷房、換気、給湯、照明などの仕様が、住宅の仕様基準に適合しているかを確認するための無料ツールです。
詳細なUA値やBEIを算出する標準計算とは異なり、告示で定められた仕様を満たしているかを確認します。小規模な戸建住宅で、省エネ基準への適合だけを確認したい場合には使いやすい方法です。
ただし、国土交通省は、このツールに記載された仕様を簡易的な評価のための例示と位置付けており、あくまで補助ツールとして利用するよう案内しています。ZEHや上位等級の詳細検討、断熱仕様の比較には、標準計算の方が適しています。
4 エネルギー消費性能計算プログラム・非住宅版
事務所、店舗、病院、ホテル、学校、工場などの非住宅建築物について、標準入力法で一次エネルギー消費量を計算する公式プログラムです。
各室の用途、床面積、外皮、空調、換気、照明、給湯、昇降機などを詳細に入力するため、実際の設計内容を反映しやすい点が特徴です。ZEBや高いBELS評価を目指す案件、設備構成を細かく評価したい案件に向いています。
一方、室数や設備系統が多い建築物では入力作業が膨大になります。2026年4月には現行版Ver.3.10が公開されているため、旧バージョンで作成したデータを使用する場合は、変更内容を確認する必要があります。
5 モデル建物法入力支援ツール
モデル建物法は、建物用途ごとに設定されたモデルへ、対象建築物の外皮や設備の代表的な仕様を入力して省エネ性能を評価する方法です。
標準入力法より入力項目が少なく、省エネ適判を効率的に進めたい場合に適しています。2026年4月時点の非住宅向けモデル建物法はVer.3.10で、事務所、ホテル、病院、福祉施設、学校、物販店舗、飲食店、集会所、工場などのモデルが用意されています。
設計初期の概算検討や一般的な省エネ適判では使いやすい一方、実際の室構成や設備制御を細かく反映したい場合は、標準入力法の方が適しています。
6 モデル建物法・小規模版
小規模な事務所、店舗、飲食店などについて、通常のモデル建物法より入力負担を抑えて評価するためのツールです。
2026年時点では、通常のモデル建物法の画面から「モデル建物法」と「モデル建物法・小規模版」を選択できます。2026年7月には次期バージョンの入力マニュアルも先行公開されており、現在も更新が続いています。
入力が簡単な反面、省エネ手法を細かく反映する用途には向きません。基準適合の確認を効率よく行うツールとして考えるのが実務的です。
7 ホームズ君「省エネ診断エキスパート」
主に木造住宅を対象とした有料の省エネ計算ソフトです。簡易CADで入力した住宅モデルから外皮面積を自動計算し、UA値、ηAC値、一次エネルギー消費量、断熱等性能等級などを確認できます。
2026年時点では、断熱等性能等級5・6・7、一次エネルギー消費量等級7・8、ZEH・GX ZEHに対応しています。パッシブ設計オプションを追加すれば、日当たり、室温、暖冷房負荷、光熱費などの検討も可能です。
標準価格は省エネ診断エキスパートが15万4,000円、サポートサービスが年額4万4,000円と案内されています。住宅の申請件数が多く、外皮面積の拾い出しや仕様変更を効率化したい設計事務所や工務店に向いています。
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8 HOUSE-省エネ
戸建住宅の外皮性能と一次エネルギー消費量を計算する有料ソフトです。間取り図を作成する感覚で住宅モデルを入力し、外壁、屋根、開口部などの面積や熱橋を自動で判別・集計します。
木造軸組、枠組壁工法、RC造、S造、混構造に対応し、複数案の比較や断熱改修効果の検討にも使用できます。2026年時点のHOUSE-省エネVer.6は、Webプログラムの更新にも対応し、新規購入価格は税込9万5,040円と案内されています。
戸建住宅の省エネ計算を内製化したいものの、大規模なCADシステムまでは必要ない事業者に適した製品です。
9 SAVE-住宅
戸建住宅と共同住宅の省エネ計算に対応した有料ソフトです。特に共同住宅では、間取りと外皮パターンを組み合わせ、最小限の住戸入力で一棟分を計算できる点が特徴です。
入力モデルから計算書や根拠図面を作成でき、建築研究所のWebプログラムAPIと連携して、複数住戸の計算結果をまとめて取得できます。住戸ごとに入力シートをアップロードする作業を減らせるため、共同住宅の申請件数が多い会社では大きな省力化が期待できます。
公開価格では、ソフトと利用者の会の初年度会費を含めて税込42万2,400円と案内されています。
10 SAVE-建築
非住宅建築物を対象とし、モデル建物法と標準入力法の両方に対応した有料ソフトです。モデル入力から面積を拾い出し、省エネ計算書や根拠図面の作成を支援します。
建築研究所の計算プログラムAPIと連携するため、ブラウザへ入力シートをアップロードし、結果をダウンロードする作業を省略できます。Revit用のアドインも同梱され、BIMモデルから外皮や設備情報を取り出して申請図書へ連携できます。
2026年時点のSAVE-建築Ver.6は、中規模非住宅の基準見直しにも対応しています。初年度はソフトと年会費を合わせて税込42万2,400円と案内されています。
11 ARCHITREND ZERO
戸建住宅の設計、確認申請図、構造、積算、外皮計算、省エネ業務までを一つのデータで連携できる3D建築CADです。
間取りや屋根などの基本データから3Dモデルを作成し、図面、申請書類、外皮計算などへ反映できます。2025年10月にリリースされたVer.12では、省エネ仕様基準や確認申請関連の機能が強化されています。
ZERO基本の公開価格は税抜90万円で、外皮性能計算や省エネ仕様基準などは構成に応じてオプションを追加します。省エネ計算だけを目的に導入するには高額ですが、設計図、確認申請、省エネ計算をまとめて管理したい工務店や住宅会社には適しています。
12 BEST省エネ基準対応ツール
BESTは、建築外皮だけでなく、空調、換気、照明、給湯、昇降機、再生可能エネルギー、蓄熱、蓄電などを含め、建物全体のエネルギー消費量を検討できるシミュレーションツールです。
BEST省エネ基準対応ツールは、建築物省エネ法で定められた計算条件に準拠し、省エネ適判、届出、性能向上計画認定などの申請を目的として使用できます。国土交通大臣が省エネ性能を適切に評価できる方法として位置付けており、BELS申請用の結果出力にも対応しています。
設備方式が複雑な建築物や、ZEBを目指して複数の省エネ手法を比較する案件に向いています。一般的なモデル建物法よりも詳細な検討が可能ですが、入力や結果の読み取りには設備設計とエネルギー計算の知識が必要です。
無料ツールが向いている設計者
年間の省エネ計算件数が少なく、建物形状や設備構成が比較的単純な場合は、まず無料の公式ツールから始める方法が合理的です。
公式ツールは費用がかからず、省エネ適判やBELSなどの申請に使用できる計算結果を直接出力できます。計算ルールを理解するうえでも、最初から有料ソフトだけに頼るより、公式プログラムの入力項目や計算結果を確認しておくことが重要です。
ただし、外皮面積の拾い出し、設備表の整理、設計変更後の再入力は自分で行う必要があります。案件数が増えるほど、無料であることよりも入力時間の方が大きなコストになります。
有料ツールが向いている設計者
住宅や非住宅の省エネ計算を継続的に受注する場合、外皮面積の自動集計、複数案比較、図面との連携、申請帳票の出力ができる有料ソフトの導入効果が高くなります。
特に、共同住宅のように計算対象住戸が多い案件や、非住宅のように室用途・設備系統が多い案件では、公式Webプログラムへ一件ずつ入力する方法では作業時間が膨らみます。
有料ソフトを選ぶ際は、価格だけでなく、対象建物、対応する計算方法、公式Webプログラムとの連携、バージョンアップ費用、サポート内容まで確認します。
失敗しない省エネ計算ツールの選び方
最も重要なのは、住宅用と非住宅用を間違えないことです。戸建住宅が中心であれば、ホームズ君、HOUSE-省エネ、ARCHITREND ZEROなどが候補になります。共同住宅を多く扱う場合は、住戸をまとめて計算できるSAVE-住宅が使いやすくなります。
非住宅の一般的な省エネ適判では、無料のモデル建物法から検討します。ZEBや高いBELS評価を目指す場合は、標準入力法に対応したSAVE-建築やBESTなどが候補になります。
また、有料ソフトを導入しても、すべての申請が自動で完了するわけではありません。計算に入力した断熱材、窓、空調、換気、照明、給湯などの仕様を図面や機器表へ反映し、計算書と申請図書を一致させる作業は必要です。
ツールは計算作業を効率化するものですが、入力条件の判断や図面との整合確認まで代わりに行ってくれるわけではありません。
ツール導入と外注は案件数で判断する
省エネ計算を内製化するか、専門会社へ外注するかは、年間の案件数と社内の担当者数で判断します。
年間数件程度であれば、高額なソフトを購入して操作方法や制度を習得するより、案件ごとに専門家へ依頼した方が費用を抑えられる場合があります。一方、年間を通じて同じ用途の計算が発生する会社では、有料ソフトを導入し、社内に計算手順を蓄積するメリットがあります。
繁忙期だけ外注する、住宅は内製して非住宅だけ外注する、計算は自社で行い申請や質疑対応だけ依頼するなど、案件に応じて分ける方法も有効です。
省エネ計算に対応できる専門家へ案件を依頼しませんか
省エネ計算ツールを導入しても、外皮面積の拾い出し、設備仕様の確認、計算方法の選択、申請図書との整合確認、審査機関からの質疑対応には専門知識が必要です。初めて扱う建物用途や、共同住宅、複合用途建築物、ZEB・ZEH・BELSを伴う案件では、操作方法を調べながら自社対応することで、かえって時間と費用が増えることもあります。
エネカルでは、建物用途、延べ面積、構造、階数、希望する評価方法、図面の作成状況などを入力して案件を作成できます。住宅・非住宅の省エネ計算だけでなく、省エネ適判、BELS、ZEH・ZEH-M、ZEB、住宅性能評価、審査機関からの質疑対応まで含めて依頼可能です。ツールを購入する前に外注費と比較したい場合も、まずは現在分かっている情報で案件を作成し、料金、納期、対応範囲をご確認ください。
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