住宅の外皮性能とは?2つの要素、メリット・デメリットを省エネ判定員が解説

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「外皮性能」という言葉を聞いたことがありますか?

屋根や外壁、窓の性能を総合的に判断した上で、

建物から外への熱の逃げにくさ(断熱性)や

太陽から建物への日差しの入りやすさ(日射取得)の程度を

性能値として示したものになります。

ここでは、住宅に関する外皮性能について解説します。

記事を読むことで、2つの要素で構成される、

住宅の外皮性能の基礎知識について理解することができます。

・フラット35等の申請に必要で、なんとなく資料を作成しているが、外皮性能についてはよく理解できていない

・省エネの義務対象増加に向けて、顧客や仕事仲間へ外皮性能について説明をしたいが、自分自身も内容をあまり理解できていない

このような問題を抱えている方へ、オススメの記事となっております。

住宅の省エネ性能にとって、外皮性能は欠かせない要素となっております。

・2025年予定の、全ての住宅に対する省エネ基準の義務化

・2023年までに予定されている、段階的に省エネ基準の引き上げ

記事を読み、基本事項を押さえた上で、これらの変化に対応していきましょう。

外皮性能とは

外皮性能とは、簡単に言うと

1,建物から外部への、熱の逃げやすさ

2,太陽から建物への、日差しの入りやすさ

を数値に表したものになります。

ここでいう「熱」というのは、エアコン等の空調によって確保した、

夏の涼しさや、冬の温かさのことを言います。

外皮性能を良くすることで、空調で発生させた熱が

外部にに逃げにくくなります。

そのため、室内の温度環境が整いやすくなります。

段ボール箱とクーラーボックスに、それぞれ氷を入れた際、

クーラーボックスに入れた氷の方が長い時間、

溶けずに残るのは想像いただけますね。

建物も同様、熱が逃げにくい方が、空調の効率も良いということです。

また、太陽からの日差しも外皮性能に影響を及ぼす要素の1つです。

季節に応じて、うまく太陽光を取り入れることで、

空調の負担を減らすことができます。

冬の寒い時期でも、太陽光が降り注いでいる窓の近くは暖かいですよね。

これがまさに、太陽からの日差しを有効活用している事例となります。

外皮性能の2つの要素

では、外皮性能はどのようにしたら評価できるのでしょうか。

外皮性能を評価するための2つの要素を紹介します。

要素1:外皮平均熱貫流率

住宅から外部への、熱の逃げやすさを数値に表したものです。

UA値とも言います。

この数値が低いほど、住宅の断熱性能が高いことになります。

要は、住宅の断熱性能を数値化したものです。

住宅の外皮となる部分

・屋根

・外壁

・外気に接する床

・その他の床(1階の床)

・基礎壁

・窓

・ドア

これらの面積と熱損失より計算により、計算できます。

面積や熱損失の計算方法に関するルールが多いですが、

EXCELシート等を使うことにより、簡単に計算することも可能です。

要素2:平均日射熱取得率

陽から住宅への、日差しの入りやすさを数値に表したものです。

・冷房期平均日射熱取得率ηAC値

・暖房期平均日射熱取得率ηAH値

の2種類に分類されます。

この数値が高いほど、太陽からの日差しによる得る熱の量が大きいことになります。

・ηAC値(冷房期)・・・値が小さいほど、外皮性能が高い

・ηAH値(暖房期)・・・値が大きいほど、外皮性能が高い

夏の暑い時期には、空調の邪魔となる太陽からの日差しも、

冬の寒い時期においては、多く取り入れた方が空調に有利となります。

太陽の高度が季節により異なることを利用して、

夏は日差しが入らず、冬は日差しが多く入るように計画することもできます。

外皮平均熱貫流率と同様、EXCELシート等を使うことにより、

比較的簡単に計算することができます。

外皮性能を向上させるメリット

住宅の外皮性能を向上させることで、3つのメリットを受けられます。

快適な温度環境

内部の熱が外に逃げづらく、適切に日射を取得している住宅は、

エアコン等の空調設備の効率も良くなるため、

夏は涼しく、冬は暖かい温度環境になります。

住む人は快適に暮らすことができるため、

買い手にとって魅力的な住宅を提供することにつながります。

エネルギー料金の節約

内部の熱が外に逃げづらく、空調の効率が良くなるため、

電気代等のエネルギー料金が節約できます。

ランニングコストが節約できるという観点で、

買い手にとって魅力的な住宅を提供することにつながります。

住宅の資産価値確保

2050年のカーボンニュートラルに向けて、

建築物の省エネ性能の重要性が高まっています。

この背景により、住宅の外皮性能の基準も徐々に高まっていくことが予想されます。

住宅の外皮性能を向上させることにより、

基準が高まった後でも、住宅の資産価値減少を防ぐことができます。

外皮性能を向上させるデメリット(課題)

住宅の外皮性能を向上させるには、課題もあります。

住宅の建設コストの増加

外壁や窓の断熱性能を向上させる必要があるため、建設コストが増加します。

元々の住宅の断熱仕様にもよって変化しますが、

数十万円~百万円程度、建設コストが増加することが多いです。

外皮性能が高い住宅は、エネルギー料金の節約や税制優遇等のメリットもあるため、

長期的に考えた際に、建設コスト増加の多くは解消することができます。

設計や施工にコツがいる

外皮性能、特に断熱性能を向上させる場合、

設計方法や施工方法でいくつか気を付けるべき点があります。

・外壁の壁体内結露に注意する必要があるため、室内の湿気が壁の中に入らないよう、防湿の措置をする必要がある

・室内の空気が上手に循環するように、換気経路等の計画を検討する必要がある

・室内の空気が外部に漏れないよう、住宅の気密性能を向上させる必要がある

これら、施工上のコツについても、随時情報発信をしていきます。

まとめ

住宅の外皮性能について解説しました。

1,住宅の外皮性能は、”熱の逃げやすさ”と”日差しの入りやすさ”を数値に表したもの

2,“熱の逃げやすさ”を「外皮平均熱貫流率UA値」、”日差しの入りやすさ”を「平均日射熱取得率」という

3,平均日射熱取得率は、「冷房期ηAC値」と「暖房期ηAH値」の2種類に区分される

4,UA値・ηAC値は小さいほど、ηAH値は大きいほど、外皮性能が高い

5,外皮性能を向上させるメリットは、「快適な温度環境」「エネルギー料金の節約」「住宅の資産価値確保」の3つ

外皮性能の基本事項を理解し、業務に応用しましょう。

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