昇降機の評価方法は?モデル建物法での計算方法を省エネ判定員が解説

モデル建物法を活用した省エネ計算では、

「様式G 昇降機入力シート」で昇降機の評価をすることができます。


出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法 入力マニュアル」【 modelv3_manual_20240401.pdf (lowenergy.jp)

昇降機は評価項目が少なく、比較的簡単ではありますが、

意外と審査上の指摘事項が発生する部分でもあります。

この記事を読むと、以下の内容を理解することができます。

・モデル建物法で評価対象となる昇降機
・昇降機の評価項目
・申請上の注意事項

要点を押さえて指摘事項の発生しない省エネ計算を実現しましょう。

評価対象となる昇降機

評価対象となる昇降機

モデル建物法で評価対象となる昇降機は、以下のとおりです。

・人荷用エレベータ
・寝台用エレベータ
・非常用エレベータ
・主動線にないエレベータ

原則として定員のあるエレベータは、評価の対象となります。

評価対象外となる昇降機

一方、以下の昇降機は、モデル建物法で評価対象外となります。

・巻胴式、油圧式リニアモーター式等の駆動方式のエレベータ
・小荷物専用昇降機や荷物用エレベータなど、荷物の運搬を目的とした昇降機
・工場等の生産エリアにおいて物品製造や運搬専用で利用する人荷用エレベータ
・エスカレーター
・いす式階段昇降機、段差解消機

一次エネルギー消費量の算出プログラムで想定されている一般的な条件に、

これらの機器が当てはまらないことが、評価対象外となる理由です。

昇降機の評価項目

モデル建物法で評価できる昇降機の項目は、「速度制御方式」のみとなります。

速度制御方式は「モデル建物法入力マニュアル」で定められた項目から選択します。


出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法 入力マニュアル」【 modelv3_manual_20240401.pdf (lowenergy.jp)

速度制御方式とその条件は、以下の表のとおりです。

速度制御方式の選択肢 条件
交流帰還制御方式等 交流帰還制御方式、ワードレオナード式、静止レオナード方式(サイリスタレオナード方式)、交流二段方式のいずれかに該当する制御方式
可変電圧可変周波数制御方式(回生なし) インバータによって交流巻き上げ電動機の電圧と周波数を制御することで速度を制御する方式。回生電力の再利用がないもの。
可変電圧可変周波数制御方式(回生あり) インバータによって交流巻き上げ電動機の電圧と周波数を制御することで速度を制御する方式。通常走行の際、回生運転中の回生電力を昇降機に蓄電して再利用するもの。

実務上は、可変電圧可変周波数制御方式の昇降機を設置するケースが多いです。

図面から制御方式を確認するか、メーカーに確認しましょう。

注意事項

モデル建物法で昇降機を評価する際の注意事項は以下のとおりです。

・図面への記載事項
・複数の建物用途で共用される昇降機の扱い

図面への記載事項

省エネ計算書で評価する項目は、図面で示す必要があります。

モデル建物法の場合、以下の項目を図示されているか、確認をしましょう

・昇降機の用途
・速度制御方式
・回生の有無

特に、改正の有無については、記載のない図面が多いようです。

審査上の指摘を減らすため、事前に確認をしておくことをお勧めします。

複数の建物用途で共用される昇降機の扱い

事務所(事務所モデル)と診療所(クリニックモデル)で共用される昇降機など、

複数の建物用途で共用される昇降機の扱いは、以下のルールによります。

・主にサービスを提供する建物用途(昇降機を利用者が存在する建物用途)の設備として入力する
・主にサービスを提供する建物用途の判断が付かない場合、床面積が最も大きい建物用途の設備として入力する

特に大規模非住宅の案件において多く発生する事例です。

留意した上で、昇降機を評価しましょう。

まとめ

今回は、モデル建物法を活用した省エネ計算における昇降機の評価方法を解説しました。

・巻胴式や荷物専用エレベータは評価対象外
・モデル建物法では速度制御方式のみを評価できる
・用途、速度制御方式、回生の有無を図面に記載する
・複数用途で共用される昇降機は、主たる利用者や用途別の建物規模でどの用途に属する昇降機か判断する

次回は、2025年の法改正後に活用できる予定のモデル建物法(小規模版)について解説します。

お楽しみに!

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