省エネ住宅とは?他の住宅との違いも分かりやすく解説!

はじめに

建築に興味がある方や、住宅の建築・購入を検討されている方は、一度は「省エネ住宅」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
近年、「2050年カーボンニュートラル」や「2030年温室効果ガス46%削減」等の宣言を受けて、「省エネ」に対する意識が高まってきています。建築業界でも、その流れにのり、「省エネ住宅」に注目が集まっています。
しかし「長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」、「ZEH」等、高性能な住宅を指す言葉が多くあり、それらと「省エネ住宅」は何が違うのか、疑問に思っている方も多いかと思います。

今回はこの「省エネ住宅」について詳しくご紹介します。

省エネ住宅とは

省エネ住宅とは「省エネルギー住宅」の略で、
国が定める「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(通称「建築物省エネ法」)の基準を満たしている「エネルギー消費の少ない住宅」のことです。
基準は2つあり、1つめが「外皮基準」、2つめが「一次エネルギー基準」です。
それぞれ、下記表の数値以下にすることが求められます。

適用基準2016年 4月施行後に 新築された建築物2016年 4月施行の際 現に存する建築物
一次エネルギー消費量基準1.0以下1.1以下
外皮基準(UA,ηAC)1.0以下

では次に、この2つの基準は何で決まるのかをご説明します。

外皮基準

外皮というのは、住宅の窓や外壁等、建物を囲う外側の部分を指します。
外皮の表面積あたりの熱の損失量が基準値以下になる必要があり、
基準を達成しているかは「外皮平均熱貫流率(UA値)」「平均日射熱取得率(ηAC値)」の2つの数値で判断します。

 外皮平均熱貫流率(UA値)

            外皮平均熱貫流率(UA値)=外皮の熱損失量/外皮面積の合計

外皮平均熱貫流率は室内と外気の熱の出入りのしやすさの指標で、住宅の内部から外部へ逃げる熱損失を外皮面積で割って求めます。数値が小さいほど、断熱性能が高いことを意味します。
全国を8つの区域に分けて基準数値が定められており、上記表にある「1.0以下」というのは、地域で定められた基準数値以下にするという意味になります。
地域区分は市町村ごとに定められているため、建築する土地が決まった段階で調べる必要があります。数値は北に行くほど厳しく(=数値が小さく)なります。

地域区分
基準数値0.460.460.560.750.870.870.87無し

 平均日射熱取得率(ηAC値)

            [平均日射熱取得率(ηAC値)=外皮の日射熱取得量/外皮面積の合計

平均日射熱取得率は太陽日射の室内への入りやすさの指標で、冷房期の日射熱取得量を外皮面積で割って求めます。数値が小さいほど、日射が入りにくく、遮蔽性能が高いことを意味します。
外皮平均熱貫流率と同様、地域区分ごとに数値が定められており、地域で定められた数値以下にする必要があります。

地域区分
基準数値無し無し無し無し3.02.82.76.7

一次エネルギー基準

一次エネルギー基準は設備のエネルギー消費量の基準です。
「一次エネルギー」というのは太陽光や風力等の自然から得られるエネルギーのことです。
私たちが生活するうえでは、一次エネルギーを変換・加工した、電気や都市ガス等の「二次エネルギー」を多く使用します。
二次エネルギーの数値を一次エネルギーに変換し、冷暖房・換気・照明・給湯設備のエネルギー消費量や、太陽光発電設備等エネルギー利用設備のエネルギー発電量が基準数値以下であることが求められます。
数値は設備ごとに基準が定められていますが、全ての合計が基準数値以下であれば良いとされています。

ほかの住宅との違い

「省エネ住宅」の基準をご説明したところで、その他の主な住宅との違いをご説明します。

性能向上計画認定住宅

「省エネ住宅」と似ているのが「性能向上計画認定住宅」です。
「省エネ住宅」の基準が定められている「建築物省エネ法」には必ず達成すべき「エネルギー消費性能基準」と、それよりも少し性能の高い「誘導基準」が定められています。
「エネルギー消費性能基準」を達成した場合は「省エネ住宅」、「誘導基準」を達成したら「性能向上計画認定住宅」となります。

ZEH

「ZEH」は「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、家庭で使用するエネルギーと、太陽光等で創るエネルギーを合わせて、エネルギー収支を実質ゼロ以下にする家を指します。「創エネ」として「再生可能エネルギー」の導入が求められることが特徴です。外皮性能は「省エネ住宅よりも厳しい基準を達成し、一次エネルギー消費性能は「エネルギー消費性能基準」よりも20%以上削減する必要があります。

長期優良住宅

住宅の省エネ性能に加え、耐震性や劣化対策等の基準が定められているのが「長期優良住宅」です。
「長期優良住宅」の省エネルギー性能は断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6を達成する必要があります。
「省エネ住宅」の基準は断熱等性能等級4・一次エネルギー消費量等級4に該当します。

認定低炭素住宅

住宅の省エネ性能に加え、再生可能エネルギー利用設備の導入と低炭素化に資する措置が求められるのが「認定低炭素住宅」です。
外皮性能は「建築物省エネ法」の「誘導基準」を達成し、一次エネルギー消費性能は「エネルギー消費性能基準」よりも20%以上削減する必要があります。

まとめ

「省エネ住宅」についてご理解いただけたでしょうか。
その他の住宅についても簡単にご説明しましたが、分かりやすく言うと今回上げた4つの住宅はすべて「省エネ住宅」に含まれると考えて良いでしょう。
住宅の購入や新築を検討されている方の中には、「省エネ住宅」というと達成するのが難しく、限られた一部の住宅では? と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「建築物省エネ法」が改正され、2025年には全ての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられる予定です。
今回ご紹介した「省エネ住宅」について、頭の隅に入れておいていただき、住宅建築や購入の際の参考にしてみてください。

関連記事