省エネ適判と省エネ届出の違いについて


建築業界において、省エネルギー性能の確保は重要な課題です。特に、新築や改築を行う場合には、法令で定められた手続きが必要です。その中でも「省エネ適判(適合判定)」と「省エネ届出」という2つの手続きは混同されやすいものですが、実際にはその目的や義務内容が異なります。本コラムでは、それぞれの概要や違い、手続きの流れなどを詳しく解説します。

省エネ適判(省エネルギー適合性判定)とは

対象建築物

以下の条件に該当する建築物は、省エネ適判の対象となります。

・床面積が300m²以上の新築・増築・改築建築物 ※2025年4月以降法改正
・一定規模の非住宅(商業施設、病院、学校など)

目的

・建築物の省エネルギー性能を担保し、適正な設計が行われているかを確認する。
・エネルギー消費削減のため、性能基準を遵守することを義務付ける。

手続きの流れ

1、設計段階での準備:設計者は建築物のエネルギー消費量に関する評価書を作成します。
2、第三者機関による審査:登録省エネ判定機関に提出し、審査を受けます。
3、適合判定の取得:審査を通過した場合、「適合判定通知書」が発行されます。

判定機関

適判を行う機関としては、以下のような登録省エネ判定機関が存在します。

・民間企業(登録省エネ判定機関)
・行政機関

詳細な情報や他の都道府県の判定機関については、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のウェブサイトhyoukakyoukai.or.jp)をご参照ください。


また、最新の情報は各機関の公式サイトや所管の行政庁に直接お問い合わせいただくことをお勧めします。

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省エネ届出(省エネルギー計画の届出)とは

概要

省エネ届出とは、省エネ法に基づいてエネルギー消費量を届け出る手続きです。こちらは、適合性判定とは異なり、「基準の適合確認」ではなく「計画内容の届出」が目的です。

対象建築物

以下の条件に該当する建築物は、省エネ届出の対象となります。

・床面積が300m²以上の住宅 ※2025年4月以降法改正
・新築、増築、改築、大規模修繕、大規模模様替え

目的

・建築物のエネルギー消費性能を向上させることで、温室効果ガスの排出量を削減する。
・2050年カーボンニュートラルという目標を達成するために、建築物の省エネ基準を順次厳しくしていく。

手続きの流れ

1、届出書の作成:設計者は建築物の省エネルギー計画書を作成します。
2、行政への提出:所管の地方自治体へ提出し、内容の確認を受けます。
3、計画内容の確認通知:計画内容に問題がない場合、届出完了となります。

行政の役割

省エネ届出は、行政が情報を収集し、実態把握を行うことが中心です。そのため、審査において不適合となる場合は少なく、基本的に情報提供が目的です。

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省エネ適判と省エネ届出の違い

項目省エネ適判(適合性判定)省エネ届出
対象一定規模以上の建築物(3,000㎡以上の非住宅)※2025年4月以降法改正一定規模以上の建築物(300㎡以上の住宅)※2025年4月以降法改正
義務の有無義務(審査を通過しないと建築確認が下りない)義務(届出のみで建築確認に影響なし)
審査機関登録省エネ判定機関など所管行政庁(各自治体)
審査内容建築確認申請と連携してエネルギー消費性能を審査エネルギー消費性能の届出のみ
提出時期建築確認申請前に適合判定を受ける必要あり工事着工の21日前までに届出
審査の流れ①設計時に申請
②判定機関が審査
③適合判定取得後、建築確認申請
①設計時に届出書提出
②届出のみ
主な法的根拠建築物省エネ法(第11・12条)建築物省エネ法(第19条)
適用範囲事務所、商業施設、工場、病院、ホテルなどの大規模建築物共同住宅など
審査結果の影響適合しない場合、建築確認不可特に制限なし(助言指導あり)

上記は2025年4月以降の法改正前のそれぞれの違いになります。
法改正後についてはこちらの記事をご覧ください。

なぜ省エネ適判と省エネ届出が必要なのか

省エネルギー政策の一環として、建築物の省エネ性能は地球温暖化対策やエネルギー資源の有効利用において重要なポイントです。特に大規模な建築物ではエネルギー消費量が多いため、適切な基準を遵守しなければ大きな環境負担を生じるリスクがあります。
また、省エネ届出により中規模建築物の省エネ性能の底上げを図ることで、建築業界全体の省エネ技術向上も目指しています。

手続きの際の注意点

省エネ適判(適合性判定)を申請する際の注意点を以下にまとめました

注意点詳細
判定が必要な建築物の規模を確認延べ床面積が300㎡以上の非住宅建築物が対象。複合用途建築物も要確認。※2025年4月以降法改正
提出する設計図書の内容を正確に準備設計図面(平面図・断面図・設備図)や計算書の不備があると審査が通らない可能性あり。
審査機関ごとの申請フォーマットに注意審査機関ごとに申請フォーマットや提出物の形式が異なるため、事前に確認が必要。
適判スケジュールを事前に計画通常2週間~1か月の審査期間を考慮し、建築確認申請前に適判を完了させる必要がある。
エネルギー消費性能計算の正確性エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版) モデル建物法Ver 3.7.1などの計算ツールを使用。計算ミスや基準値未達成があると適判が不適合となる。
適判後の設計変更への対応設計変更が発生した場合、適判の再手続きが必要になることがあるため、事前相談を推奨。
コストと手続き負担を考慮審査費用が数十万円かかるため、事前に予算に組み込むことが重要。

これらの注意点を押さえることで、適判申請をスムーズに進めることができます。必要に応じて建築士や審査機関と連携し、適切な対応を進めましょう。

省エネ届出の注意点

省エネ届出を行う際の注意点をまとめました

注意点詳細
届出が必要な建築物の規模を確認延べ床面積300㎡の建築物(住宅)が対象。一戸建て住宅も含まれる。※2025年4月以降法改正
提出期限に注意工事着工の21日前までに提出が必要。
届出先は所管行政庁(自治体)所管行政庁(自治体)に届出を行う。自治体ごとにフォーマットや資料が異なる可能性あり。
書類不備がないようにチェック建築物のエネルギー消費性能計算書や設計図書を正確に準備。不備があると再提出が必要になる。
エネルギー消費性能の基準に適合させる建築物省エネ法の基準に適合していることが前提。
届出後の設計変更に注意建築計画変更時は変更届が必要。エネルギー性能に影響する変更がある場合は要相談。
届出しないと指導対象になる可能性未届出の場合は行政指導の対象となる。

これらの注意点を押さえることで、省エネ届出の手続きをスムーズに進めることができます。自治体ごとのルールも確認しながら、事前準備を徹底しましょう。

まとめ

省エネ適判と省エネ届出は、それぞれ目的や手続きが異なるため、対象建築物や規模に応じて適切な手続きを行う必要があります。
省エネ適判は基準の適合性を確認するための審査を含む一方、省エネ届出はエネルギー消費量の届出によって行政が情報を把握するための手続きです。これらを正確に理解し、円滑な手続きを進めることが省エネ性能を確保する上で重要です。

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