省エネ性能を確保するための計算は、住宅や非住宅の見積りを行う際に極めて重要です。しかし、計算の見誤りや誤解により、予算オーバーや施工トラブルに発展するケースも少なくありません。
見積り依頼時のトラブルを未然に防ぐための、注意すべきポイントを5つ紹介します。
設計情報の不備による計算誤差を事前に防ぐ
省エネ計算を行うためには、設計情報の正確な提供が不可欠です。設計段階で以下のような情報不足があると、計算精度が低下し、見積りに大きな影響を及ぼします。
・断熱材の種類や厚み
断熱材は省エネ性能に直結する要素です。種類によって熱抵抗値が異なるため、誤った情報が反映されると正確な省エネ性能が算出できません。
・開口部の面積や仕様
窓やドアなどの開口部は、外皮性能に大きな影響を与えます。面積や仕様が誤って計算されると、建物全体の断熱性能が低く見積もられることがあります。
・換気設備の種類と性能
換気設備の種類や換気回数の設定も重要です。これらが不明確だと計算結果が不正確になり、省エネ基準を満たさない恐れがあります。
設計情報の不備は、後工程で設計変更や補正が必要となり、結果的に工期延長やコスト増加につながるため、設計者と計算担当者の綿密な情報共有が求められます。
ポイント
・設計者と計算担当者の密な連携を図る
・省エネ基準を満たす仕様を事前に確定する
地域区分を考慮した計算を行う
日本は気候条件が地域ごとに異なるため、地域区分ごとに適した省エネ基準を適用する必要があります。例えば、寒冷地では断熱性能を高めることが重要ですが、温暖地では通風性能を高めることが重視されることがあります。
具体例
・寒冷地(地域区分1~3)
断熱材の厚みを増やし、窓のガラス仕様を複層ガラスや高断熱型にする必要があります。
・温暖地(地域区分6~8)
断熱材の厚みを抑えつつ、換気設備や日射遮蔽対策を強化する方が効果的です。
地域区分を誤認すると、不必要な断熱性能の向上や不足が発生し、見積り額が無駄に増減します。
具体的な対策
・最新の地域区分マップを確認する
・地域に適した外皮性能の基準値を把握する
計算方法の選択ミス
住宅の省エネ計算標準計算ルート、簡易計算ルート、 モデル住宅法があります。建築物の種類や規模、設計目的に応じて適切な方法を選択しなければなりません。
非住宅の省エネ計算
・標準入力法
・モデル建物法
・小規模モデル建物法(基準適合義務制度施行後は廃止)
住宅の省エネ計算
・外皮計算:壁や窓、屋根などの断熱性能を評価する計算
・一次エネルギー消費量計算:暖房や冷房、換気、照明、給湯などのエネルギー消費量を計算する
エネルギー設備の選定ミス
省エネ計算には、建物内で使用する空調・給湯・照明などの設備機器の性能が影響します。適切な設備選定を行わないと、省エネ基準を満たさない見積りや、不必要に高額な設備投資につながることがあります。
主な選定ミス
・空調機器
建物規模に対して出力が不足していると、空調負荷が増大します。反対に、過剰な出力の機器は無駄なコストを生む要因になります。
・給湯器
高効率給湯器が必要な場合、従来型の機器を選定すると基準を満たせません。
・照明設備
LED照明など高効率なものを選ぶことで、消費電力を抑えることができますが、配置や個数が適切でないと無駄なエネルギー消費が発生します。
具体的な対策
・設備メーカーの仕様書を細かく確認する
・過去の計算事例を参考に適正なスペックを選択する
・見積り時点で最新の省エネ基準を反映する
最新の法規制や基準の未確認
省エネ計算において、法規制や基準の更新情報を把握せずに計算を行うと、見積り時に誤りが生じます。省エネ基準は時代に合わせて強化されることが多いため、過去の基準に基づいて計算していると、要件を満たせなくなります。
注意点
・補助金制度の要件変更:補助金制度の条件変更に伴い、補助金対象外になる場合があります。
・ZEB基準の更新:ゼロエネルギービルディング(ZEB)などの省エネ基準は技術革新とともに見直されることがあります。
具体的な対策
・建築士や計算担当者向けの講習会や研修に定期的に参加する
・国土交通省や経済産業省の公式発表を定期的にチェックし、最新情報を入手する
まとめ
住宅・非住宅問わず、見積りトラブルを防ぐためには、正確な省エネ計算が必要です。設計情報の不備や地域区分、計算方法の選択ミス、エネルギー設備の選定ミス、最新の法規制の確認不足といった注意点を押さえることで、見積り時のリスクを軽減できます。
特に、省エネ法やZEB基準に準拠した計画を進める際は、計算精度の高さが建築プロジェクト全体の成功に直結します。常に最新の情報を把握し、設計者・施工業者・顧客との連携を密にしながら、確実な省エネ計算を行いましょう。
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