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はじめに
住宅ローンの「フラット35S」の技術基準や、11月に終了した「こどもみらい住宅支援事業」の条件としてあげられている「性能向上計画認定住宅」をご存知でしょうか。
長期優良住宅や認定低炭素住宅等と比べると、知名度は低いですが、住宅の認定制度のひとつです。
今回はこの「性能向上計画認定住宅」についてご紹介します。
性能向上計画認定住宅とは
「性能向上計画認定住宅」とは「建築物省エネ法」の第35条に掲げられた基準をクリアした住宅のことです。
対象
・新築
・増築
・改築
・復元
・模様替え
・空気調和設備等の設置・改修
適合基準
下記A~Cすべてに適合すること。
A, 申請建築物のエネルギー消費性能が下表の誘導基準に適合するものであること
対象用途 | 適用基準 | 省エネ基準に対する誘導基準の水準※1 | |
2016年4月施行の際 現に存する建築物 | 2016年4月施行後に 新築された建築物 | ||
非住宅 | 一次エネルギー消費量基準※2 | 0.8 | 1.0 |
外皮基準(PAL*) | 1.0 | – | |
住宅 | 一次エネルギー消費量基準※2※3 | 0.9 | 1.0 |
外皮基準(UA,ηAC) | 1.0 | – | |
※1表中の数字は設計値を基準値で除した数値を表している。 ※2一次エネルギー消費量基準については、「設計一次エネルギー消費量(その他一次エネルギー消費量を除く)」/「基準一次エネルギー消費量(その他一次エネルギー消費量を除く)」(BEI)が表中の値以下になること。 ※3住宅の一次エネルギー消費量基準については、認定の対象に応じ、住棟全体(全住戸+共用部の合計)又は申請する住宅部分が表中の値以下になること。 |
◇一次エネルギー消費量基準とは
一次エネルギー基準は設備のエネルギー消費量の基準です。「一次エネルギー」というのは太陽光や風力等の自然から得られるエネルギーのことです。私たちが生活するうえでは、一次エネルギーを変換・加工した、電気や都市ガス等の「二次エネルギー」を多く使用します。二次エネルギーの数値を一次エネルギーに変換し、冷暖房・換気・照明・給湯設備のエネルギー消費量や、太陽光発電設備等エネルギー利用設備のエネルギー発電量が基準数値で割った際に0.9以下(非住宅の場合は0.8以下)であることが求められます。数値は設備ごとに基準が定められていますが、全ての合計が基準数値の0.9以下(非住宅の場合は0.8以下)であれば良いとされています。
◇外皮基準とは
外皮というのは、住宅の窓や外壁等、建物を囲う外側の部分を指します。外皮の表面積あたりの熱の損失量が基準値以下になる必要があり、基準を達成しているかは「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「平均日射熱取得率(ηAC値)」の2つの数値で判断します。
[外皮平均熱貫流率(UA値)=外皮の熱損失量/外皮面積の合計]
外皮平均熱貫流率は室内と外気の熱の出入りのしやすさの指標で、住宅の内部から外部へ逃げる熱損失を外皮面積で割って求めます。数値が小さいほど、断熱性能が高いことを意味します。全国を8つの区域に分けて基準数値が定められており、上記表にある「1.0以下」というのは、地域で定められた基準数値以下にするという意味になります。地域区分は市町村ごとに定められているため、建築する土地が決まった段階で調べる必要があります。数値は北に行くほど厳しく(=数値が小さく)なります。
地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
基準数値 | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | 無し |
[平均日射熱取得率(ηAC値)=外皮の日射熱取得量/外皮面積の合計]
平均日射熱取得率は太陽日射の室内への入りやすさの指標で、冷房期の日射熱取得量を外皮面積で割って求めます。数値が小さいほど、日射が入りにくく、遮蔽性能が高いことを意味します。外皮平均熱貫流率と同様、地域区分ごとに数値が定められており、地域で定められた数値以下にする必要があります。
地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
基準数値 | 無し | 無し | 無し | 無し | 3.0 | 2.8 | 2.7 | 6.7 |
B, 建築物エネルギー消費性能向上計画に記載された事項が基本方針に照らして適切なものであること
C, 資金計画がエネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等を確実に遂行するため適切なものであること
申請方法
①登録省エネ判定機関等に技術的審査依頼
②技術的審査適合証交付
③所管行政庁に「建築物エネルギー消費性能向上計画」申請
(技術的審査適合証添付)
※所管行政庁により異なる可能性があるため、事前に提出書類の確認が必要です
④認定通知書交付
⑤新築等工事着工・完了
⑥完了報告
認定のメリット
認定を受けた場合、省エネ性能向上のための設備について、通常の建築物の床面積を超える部分を不算入とする容積率の特例を受けることができます。(※延床面積の10分の1を限度とする)
その他、冒頭で記載した「フラット35S」金利Aプランの省エネルギー性の基準や、グリーン住宅ポイントの対象要件の基準を満たす証明にもなります。
また、適用基準をクリアした住宅は、気密性・断熱性に優れているため、光熱費を抑えながら快適に暮らすことができるのも嬉しいポイントです。
まとめ
「性能向上計画認定住宅」についてご理解いただけたでしょうか。
長期優良住宅や認定低炭素住宅は省エネ以外の基準も達成する必要がありますが、性能向上計画認定住宅は省エネ性能だけに特化しています。
直接的な補助金等はありませんが、認定をとることで建物の省エネ性能の証明になるため、長期優良住宅や認定低炭素住宅を申請しない場合は「性能向上計画認定」の取得をご検討いただければと思います。
「省エネ住宅」との違いについても「省エネ住宅とは?」でご紹介していますので、ぜひご覧ください!