複数の用途に使用している給湯機の入力方法は?モデル建物法における入力方法を省エネ判定員が解説

モデル建物法を活用した省エネ計算の申請手続きにおいて、「給湯機が複数の用途に使用されるため、加熱能力に応じて用途別で台数を按分してください」という、審査機関からの指摘事項を受けたことはありませんか?

この記事を読むと以下の内容について知ることができます。

・給湯機の台数按分が発生する理由
・給湯機の台数按分の方法
・給湯機の台数按分が必要なケース

モデル建物法における給湯機の台数按分をマスターして、楽に申請手続きを突破しましょう!

給湯設備を評価するシート

モデル建物法を活用した省エネ計算において、給湯機の仕様は「様式F 給湯入力シート」で入力します。

出典:国立研究開発法人 建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」

建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報 (kenken.go.jp) 】※5.2 サンプル1

このシートの中で給湯機の配置や能力、保温仕様などを評価します。

複数用途に使用する給湯機の評価方法

前述の様式Fの評価項目の内、「給湯用途」と「台数」によって、1つの給湯機が複数の給湯用途にお湯を供給することを表現します。

例えば、ガス給湯器「GH-1」が洗面と浴室の用途にお湯を供給している場合、計算書様式Fの入力方法は、以下の表のようになります。

給湯用途熱源名称台数定格加熱能力定格消費電力定格燃料消費量
洗面手洗いGH-10.3 台34.8 kW0.04 kW42.1 kW
浴室GH-10.7 台34.8 kW0.04 kW42.1 kW

このように、1つの給湯機を用途別で、2行に分けて表現します。

この時、「0.3」や「0.7」といった台数を算定(台数按分)する方法がポイントです。

また、給湯機の能力値(加熱能力や燃料消費量)については、

用途別で異なる値とするのではなく、あくまで1台分の値を入力することが注意事項です。

台数を算定(台数按分)する方法

ではどのようにして、用途別で給湯機の台数を按分するのでしょうか。

モデル建物法入力マニュアルには、このように記載されています。

出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法 入力マニュアル」【 modelv3_manual_20240401.pdf (lowenergy.jp)

この内容を簡潔にまとめると、

「同一の給湯機が複数の給湯用途に使用される場合、給湯負荷台数を按分する」

ということになります。

給湯負荷(kW)で台数を按分することは少し難しいため、

実務上は用途別の給湯量(ℓ/時間)で台数を按分する事例が多いです。

用途別の給湯量の参考値は以下の表のとおりです。

(給湯温度を60℃とした際の参考値です。)

給湯用途1時間当たりの給湯量
個人洗面器7.5ℓ/時間
一般洗面器10~40ℓ/時間
洋風浴槽100~300ℓ/時間
シャワー50~300ℓ/時間
台所流し45~75ℓ/時間
配膳流し20~40ℓ/時間
掃除流し45~75ℓ/時間
洗濯流し60~90ℓ/時間
公衆浴場90~120ℓ/時間

出展:空気調和・衛生工学会「空気調和・衛生工学便覧第12版 給排水衛生設備設計篇」

このような値を参考にして用途別の給湯量を算出して、その割合に応じて台数を按分します。

台数按分のケーススタディ

実際、どのように台数按分を行うのか、事例を示します。

ケース1:複数の計算対象の用途に使用する場合

給湯設備の評価対象である厨房用途・浴室用途の両方に使用する給湯機の事例です。

各用途の給湯量(ℓ/時間)は以下の表の通りとします。

給湯用途水栓(給湯栓)の数1か所当たりの給湯量
調理流し台①(厨房用途)1か所75ℓ/時間
調理流し台②(厨房用途)3か所75ℓ/時間
浴室シャワー(浴室用途)1か所300ℓ/時間
浴槽(浴室用途)1か所300ℓ/時間

この場合、用途別の給湯量は以下の通りです。

① 厨房用途:75ℓ/時間×1か所+75ℓ/時間×3か所=300ℓ/時間
② 浴室用途:300ℓ/時間×1か所+300ℓ/時間×1か所=600ℓ/時間
③ 合計  :300ℓ/時間+600ℓ/時間=900ℓ/時間

この給湯量を用いて、給湯機の台数を按分します。

按分の計算式は以下の通りとなります。

厨房用途の台数:300ℓ/時間÷900ℓ/時間≒0.33台(①÷③)
浴室用途の台数:600ℓ/時間÷900ℓ/時間≒0.67台(②÷③)

このように計算をした台数に基づいて、「0.33台の給湯機」と「0.67台の給湯機」の2行に分けて1つの給湯機を様式Fに入力してください。

定格加熱能力・定格消費電力・定格燃料消費量の値は、あくまで1台分を入力することに注意してください。

ケース2:評価対象用途と評価対象外用途に使用する場合

給湯設備の評価対象である手洗い用途と共に、

評価対象外用途である洗濯用途にも使用する給湯機の事例です。

各用途の給湯量(ℓ/時間)は以下の表の通りとします。

給湯用途水栓(給湯栓)の数1か所当たりの給湯量
洗面台①(手洗い用途)1か所40ℓ/時間
洗面台②(手洗い用途)2か所40ℓ/時間
洗濯流し(評価対象外)2か所90ℓ/時間

この場合、用途別の給湯量は以下の通りです。

① 手洗い用途:40ℓ/時間×1か所+40ℓ/時間×2か所=120ℓ/時間
② 評価対象外:90ℓ/時間×2か所=180ℓ/時間
③ 合計   :120ℓ/時間+180ℓ/時間=300ℓ/時間

この給湯量を用いて、給湯機の台数を按分します。

按分の計算式は以下の通りとなります。

手洗い用途の台数:120ℓ/時間÷300ℓ/時間≒0.40台(①÷③)
評価対象外の台数:180ℓ/時間÷300ℓ/時間≒0.60台(②÷③)

洗濯用途は評価対象外となるため、「0.40台の給湯機」のみを様式Fに入力してください。

この場合においても、定格加熱能力・定格消費電力・定格燃料消費量の値は、

1台分を入力することに注意してください。

まとめ

今回は複数の用途に使用している給湯機の評価方法について解説しました。

・モデル建物法入力シートの様式Fで給湯機を評価する
・複数の用途に使用する場合、給湯機の台数を按分する
・実務上、用途別の給湯量で台数を按分するケースが多い
・加熱能力などの性能値は、あくまで1台分のものを入力する

次回は、給湯機のエネルギー消費効率に影響を及ぼす保温仕様と節湯器具について解説します。

お楽しみに!

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